ZEH住宅とは?基準、メリット・デメリット、補助金について解説

テレビCMや住宅雑誌でよく見るZEHってどんな家なの?
補助金があるって聞いたけど、誰でも使えるの?
普通の家を建てるより、ZEHの方がお得なの?

家づくりについて調べると、ZEH(ゼッチ)という言葉をよく目にします。しかし、なんだかよくわからないという方も多いのではないでしょうか。

ZEH(ゼッチ)とは家全体でのエネルギー収支をゼロにする高性能な省エネ住宅のことです。

政府は2030年までに新築住宅の平均でZEHを目指しているため、補助金制度も充実しています。そのため、補助金制度でおトクに快適なマイホームが建てられるのが魅力です。

この記事では、以下の内容でZEH住宅について解説します。

この記事でわかること
  • ZEH住宅の特徴と種類
  • ZEH住宅の良さや後悔ポイント
  • おトクにZEH住宅を建てる補助金と減税制度
  • ZEH住宅対応の建築会社のかんたんな見つけ方

この記事をお読みいただくと、マイホームをZEH住宅にするかの検討ができますので、ぜひ最後までチェックしてくださいね。

ZEH(ゼッチ)とは高性能な省エネ住宅

ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)は、住宅全体の年間エネルギー消費を正味(ネット)でゼロにする高性能な省エネ住宅です。

高断熱化や高効率な設備で消費エネルギーを抑え、太陽光発電などでエネルギーを創り出すという特徴があります。

また、ZEH住宅はさまざまな基準により種類がわけられています。

ここでは、特徴や基準・種類について見てみましょう。

ZEH住宅3つの特徴

ZEH住宅には3つの特徴があります。

ZEH住宅の特徴
  1. 高断熱
  2. 省エネ
  3. 創エネ

高断熱

高断熱とは断熱性が高いことです。

窓を断熱性の高いものにしたり断熱材を使用したりして、住宅内外への熱の移動を少なくします。

断熱性能が高い住宅は暑さや寒さからの影響を減らすため、少しの冷暖房で家の中を快適に保つこと可能です。

省エネ

省エネとはエネルギーを効率よく使うことです。

効率が良い冷暖房や給湯の設備、消費電力の少ないLED電球を導入して消費エネルギーを抑えます。

エネルギーを効率的に使うため、コストを抑えることが可能です。

また、HEMS(ヘムス)と呼ばれるシステムで家全体で使用するエネルギーを管理します。

創エネ

創エネとは、太陽光発電システムなどの再生可能エネルギー設備により、エネルギーを創り出すことです。

創り出すエネルギーが消費するエネルギーを上回ることで、年間エネルギー消費の正味(ネット)ゼロを実現します。

こちらも消費エネルギーの低減や売電により、コストを抑えることが可能です。

ZEH住宅の種類と基準

ZEH住宅の種類は性能や導入設備によって分けられます。

まず、ZEHZEH+(ゼッチプラス)が大きな分類です。

さらにZEHとZEH+の中で以下のとおり細分化されます。

※ ZEH Orientedは、都市部狭小地や多雪地域に限ります。

※ Nearly ZEH、Nearly ZEH+は寒冷地、低日射地域、多雪地域に限ります。

ZEH住宅のメリット・デメリットは?後悔はしない?

地球環境に優しいZEH住宅ですが、マイホームを建てる皆さんにも光熱費が抑えられるなどメリットがたくさんあります。

一方で、初期費用が高いなどのデメリットもあります。

それぞれ見ていきましょう。

5つのメリット

メリットは5つあります。

メリット
  • 光熱費を安く抑えられる
  • 寒暖差が少なく一年中快適に過ごせる
  • 自然災害に備えられる
  • 補助金や減税制度がある
  • 住宅の資産価値が向上する

光熱費を安く抑えられる

ZEH住宅の一番のメリットは、光熱費を安く抑えられる点です。

一般的な住宅でかかる年間の光熱費と比較すると、東京で約12万円、札幌で約18万円の差がでます。

年間の光熱費比較一般的な住宅ZEH基準相当差額
東京283,325円159,362円123,963円
札幌393,191円208,323円184,868円
出典:一般社団法人 住宅生産団体連合会

さらに、太陽光発電の設備を設置すると、光熱費の年間収支を黒字にすることが可能です。

1年間での1戸あたりの年間エネルギーコスト収支は、21,266円の黒字との調査結果も出ています。

年間売電額年間エネルギー購入額年間エネルギーコスト収支
152,367円131,101円+21,266円
対象期間:2019年4月~2020年3月
対象:7,647戸
出典:環境共創イニシアチブ「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス支援事業調査発表会2020」 P174

寒暖差が少なく一年中快適に過ごせる

断熱性能が高く、夏は涼しく冬は暖かい一年中快適な生活が可能です。

また、各部屋ごとの温度ムラが少なくなり、家中の温度が一定に保てるため、冬場のヒートショックのリスクが少なくなります。

ヒートショックとは、急激な温度変化で血圧が上下し、体に大きな負担がかかることです。
部屋ごとの温度差がヒートショックの原因です。暖かいリビングから寒い脱衣所に移動し、浴槽に入る時などに起こりやすくなります。

自然災害に備えられる

太陽光発電などの自家発電設備を設置するため、家庭用蓄電池があればエネルギーを蓄えてられます。

そのため停電が起きても、蓄電池に切り替えて電気の使用が可能です。

また、断熱性能が高いZEH住宅は、暖かさを蓄えています。

暖房が使えなくても比較的暖かく過ごせるため、冬場の停電でも安心です。

補助金制度や減税制度がある

ZEH住宅には充実した補助金制度や減税制度があります。

条件を満たせば、新築やリフォームの際に支援を受けられる点もZEH住宅のメリットです。

ZEH住宅向けの補助金制度
  • ネット・ゼロ・エネルギーハウス(ZEH)支援事業
  • 次世代ZEH+実証事業
  • 次世代HEMS実証事業
  • 地域型グリーン化事業
  • こどもみらい住宅支援事業
ZEH住宅向けの減税制度
  • 所得税の減税
きしこ

補助金・減税制度の詳細は後ほどご説明します。

住宅の資産価値が向上する

2016年より「BELS(ベルス)」と呼ばれる住宅の省エネ性能表示の制度を国が実施しています。

BELSは5つの星マークで評価が表示され、星の数が多いほど省エネ性能が高いです。

省エネ性能が高いZEH住宅はBELSの星4、5つとなります。

資産価値が高く評価される可能性があるため、売却検討に有利です。

4つのデメリット

次にZEH住宅の4つのデメリットを紹介します。

デメリット
  • 初期費用が高い
  • 建築会社が限定される
  • 屋根の形や間取りが制限される
  • 太陽光発電設備のメンテナンスが手間

初期費用が高い

1つ目のデメリットは初期費用が高い点です。

ZEH住宅にするためには、以下のような工夫や設備の導入が必要なため、一般的な住宅よりも初期費用が高くなります。

ZEH住宅に必要な工夫や設備
  • 断熱性や気密性に細心の注意を払った部材選びや施工
  • 省エネ性能の高い設備の導入
  • 太陽光発電設備や管理システム(HEMS)の導入

しかし、現在、国はZEH住宅の普及を推し進めているため、補助金制度が充実しています。また、住んでからの光熱費は安く抑えられます。

きしこ

補助金や光熱費も含めてトータルで考えると良いですね!

建築会社が限定される

ZEH住宅を建てられる建築会社は限られています。

補助金を受けるためには、ZEHビルダー/プランナーとして登録されている建築会社や、地域型住宅グリーン化事業に採択されている工務店で家を建てる必要があります。

屋根の形や間取りに制限がかかる

ZEH住宅では屋根の形に制限がかかります。太陽光での発電量を確保するために、屋根の角度や方向を考える必要があるからです。

また、エネルギー消費量を抑えるために部屋を間仕切ったり、日射量を減らすために大きな窓は使えなかったりする場合もあります。

以下の間取りは希望が叶わないことも。

  • 吹き抜けのある広いリビング
  • 高い天井の開放感あふれる家

ZEH住宅と希望の間取りの優先順位を決めておくと良いでしょう。

きしこ

希望する間取りがZEH住宅で実現可能か、建築会社に事前に確認することが大切です。

太陽光発電設備のメンテナンスが手間

太陽光発電設備は、定期的にメンテナンスをおこなう必要があります。

おもに太陽光パネルとまた、太陽光発電では、電気に変換するパワーコンディショナーという機械です。

メンテナンス理由や費用は以下のとおりです。

メンテナンス理由メンテナンス費用
太陽光パネル発電量の低下
・日射や強風による損傷
・鳥のフンによる汚れ
約2万円/回
パワーコンディショナー寿命が15年程度約20万円

「メンテナンスの手間や費用は想定外だった!」とならないように、事前に確認しておきましょう。

ZEH住宅の補助金制度・減税制度

ZEHが対象となる補助金と所得税の減税について紹介します。

制度は年度毎に変わるので、最新情報をチェックしましょう。
本記事で紹介する補助金・減税制度は2022年10月時点の情報です。
予算やスケジュールは年度毎に変わりますので、最新情報は建築会社や金融機関に確認しましょう。

ZEH住宅向けの補助金制度

ZEH住宅向けの補助金制度は以下の5つです。

補助金制度
  • ネット・ゼロ・エネルギーハウス(ZEH)支援事業
  • 次世代ZEH+実証事業
  • 次世代HEMS実証事業
  • 地域型グリーン化事業
  • こどもみらい住宅支援事業

ZEH支援事業・次世代ZEH+実証事業・次世代HEMS実証事業は、ZEH住宅に特化した支援事業です。

地域型住宅グリーン化事業とこどもみらい住宅支援事業は、ZEH住宅に特化した事業ではありませんが、対象となる住宅の1つとしてZEH住宅があります。

この2つの事業は、ZEH住宅向けの部分のみ抜粋して紹介します。

ネット・ゼロ・エネルギーハウス(ZEH)支援事業

「2030年までに新築住宅の平均でZEHの実現を目指す」という政策目標に向けて、ZEHの普及を目的とした補助金です。

対象ZEH、Nearly ZEH、ZEH Oriented、ZEH+、Nearly ZEH+
補助金額ZEH、Nearly ZEH、ZEH Oriented:定額55万円/戸
ZEH+、Nearly ZEH+:定額100万円/戸
追加補助金額・蓄電システム2万円/kWh(上限20万円、または補助対象経費の1/3のいずれか低い額)
申請方法事前に登録された建築会社がおこなう
事業詳細【環境省戸建ZEH】令和4年度 戸建住宅ZEH化等支援事業

次世代ZEH+実証事業

蓄電システム、燃料電池、V2H充電設備、太陽熱利用温水システムを活用するモデルを実証することを目的とした補助金です。

対象次世代ZEH+
補助金額定額100万円/戸
追加補助金額・蓄電システム2万円/kWh(上限20万円、または補助対象経費の1/3のいずれか低い額)
・燃料電池:2万円/台
・V2H充電設備(充放電設備):上限75万円、または補助対象経費の1/2のいずれか低い額
・太陽熱利用温水システム:液体式 17万円/戸、空気式 60万円/戸
申請方法事前に登録された建築会社がおこなう
事業詳細【経産省戸建ZEH】令和4年度 ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス実証事業
次世代ZEH+実証事業

次世代HEMS実証事業

次世代ZEH+にさらにHEMSによる制御等を導入した家に対する補助金です。

対象次世代ZEH+で、AI・IoT技術等による最適制御を行う仕組み(HEMS)を備えていること
補助金額定額112万円/戸
追加補助金額・蓄電システム2万円/kWh(上限20万円、または補助対象経費の1/3のいずれか低い額)
・燃料電池:2万円/台
・V2H充電設備(充放電設備):上限75万円、または補助対象経費の1/2のいずれか低い額
・太陽熱利用温水システム:液体式 17万円/戸、空気式 60万円/戸
申請方法事前に登録された建築会社がおこなう
事業詳細【経産省戸建ZEH】令和4年度 ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス実証事業 次世代HEMS実証事業

地域型住宅グリーン化事業

省エネ性や耐久性に優れた木造住宅の普及を目的とした補助金です。

対象中小工務店などによる木造住宅のZEH、Nearly ZEH
補助金額上限140万円/戸、または補助対象経費の1/10のいずれか低い額
追加補助金額・地域材の使用:20万円
・三世代同居対応住宅:30万円
・建築主が40歳未満、または18 歳未満の子供と同居:30万円
・地域住文化加算20万円/戸
・バリアフリー加算30万円/戸
※加算の上限は40万円
申請方法事前に登録された建築会社がおこなう
事業詳細地域型住宅グリーン化事業評価事務局

こどもみらい住宅支援事業

子育て・若者夫婦世帯の住宅取得に伴う負担軽減を目的とした補助金です。

対象夫婦のどちらかが39歳以下、または18 歳未満の子を有する世帯が建てるZEH住宅
補助金額100万円/戸
申請方法事前に登録された建築会社がおこなう
事業詳細国土交通省 こどもみらい住宅支援事業について

ZEH住宅向けの減税制度

ZEH住宅向けの減税制度として所得税の減税(住宅ローン減税)があります。

所得税の減税

住宅ローンを利用して住宅の取得やリフォームをした場合に、住宅ローン減税が受けられます。

ZEH住宅を取得した場合には、一般的な住宅よりも還付される金額が大きいです。

住宅ローン減税の申告は皆さん自身で行い、1年目は確定申告、2年目以降は給与所得者であれば年末調整で申告します。

ZEH住宅を建てられる建築会社の見つけ方3選

ZEH住宅はハウスメーカーでも工務店でも建築可能です

ただし補助金を受けたい場合には、補助金申請の対象となっている建築会社で建てる必要があります。

そこでZEH住宅を建てられる建築会社の見つけ方を3つ紹介します。

ZEHビルダー/プランナー専用のサイトで検索

ZEH支援事業の補助金を受けるためには、ZEHビルダー/プランナーとして登録されている会社での建築が必要です。

ZEHビルダー/プランナーは、一般社団法人環境共創イニシアチブのZEHビルダー/プランナー(フェーズ2)一覧検索で探せます。

手順は以下のとおりです。

  1. 建築予定の都道府県で検索
    →その地域で登録しているZEHビルダー/プランナーの一覧が表示されます。
  2. ZEH普及の実績の項目を降順に並べ替え
    →ZEH住宅の実績が多い建築会社を順番に確認することができます。
  3. 気になる会社のホームページにアクセスして詳細を確認
きしこ

すでに気になっている建築会社がある場合には、会社名で検索しましょう。
その会社がZEHビルダー/プランナーとして登録されているか確認できます。

地域型住宅グリーン化事業の採択グループ・工務店検索

地域型住宅グリーン化事業の補助金を受けるためには、採択されている工務店で家を建てる必要があります

採択されているグループや工務店は一般社団法人 木を活かす建築推進協議会の地域型住宅グリーン化事業採択グループ紹介・工務店検索で検索が可能です。

一括見積もりの際にZEH住宅の希望を記入する

一括見積りの際に省エネ住宅の希望を記入することで見つけることも可能です。

自由記入欄に「ZEH住宅の施工実績のある建築会社を希望します。」等と記入します。

無料でZEH住宅の費用相場を比較できるので便利です。

まとめ:ZEH住宅のメリット・デメリットを理解して、補助金を使っておトクに建てよう

この記事では、ZEH住宅について紹介しました。

ZEH住宅とは家全体でのエネルギー収支をゼロにする高性能な省エネ住宅で、以下のメリット・デメリットがあります。

メリット・光熱費を安く抑えられる
・寒暖差が少なく一年中快適に過ごせる
・自然災害に備えることができる
・補助金や減税制度がある
・住宅の資産価値が向上する
デメリット・初期費用が高い
・建築会社が限定される
・屋根の形や間取りが制限される
・太陽光発電設備のメンテナンスが手間がかかる

また国をあげて省エネを進めているため、ZEH住宅に対する補助金や減税制度も充実しています。

スクロールできます
補助金制度ZEH支援事業次世代ZEH+実証事業次世代HEMS実証事業地域型グリーン化事業こどもみらい住宅支援事業
目的ZEH住宅の普及蓄電システム、燃料電池、V2H充電設備、太陽熱利用温水システムを活用するモデルを実証すること次世代ZEH+で、AI・IoT技術等による最適制御を行う仕組みを活用するモデルを実証すること省エネ性や耐久性に優れた木造住宅の普及子育て・若者夫婦世帯の住宅取得に伴う負担軽減
対象ZEH
Nearly ZEH
ZEH Oriented ZEH+
Nearly ZEH+
次世代ZEH+次世代ZEH+中小工務店などによる木造住宅のZEH、Nearly ZEH夫婦のどちらかが39歳以下、または18 歳未満の子を有する世帯が建てるZEH住宅
金額定額55万円 or 100万円定額100万円定額112万円最大140万円100万円/戸

どの補助金制度も、申請は皆さんではなく事前に登録されている建築会社がおこないます。

つまりZEH住宅を建てたい場合には、ZEH住宅を建てられる建築会社探しが必要です。

この記事では、ZEH住宅を建てられる建築会社の見つけ方を3つ紹介しました。

ZEH住宅を建てられる建築会社の見つけ方

環境への配慮だけでなく、皆さんの家計や健康にも優しいのがZEH住宅です

家づくりに対して以下のような考え方がある方は、ZEH住宅を検討すると良いでしょう。

  • 環境に配慮した家を建てたい
  • 一年中快適で健康的に過ごしたい
  • 自然災害に備えたい
  • 初期費用はかかっても、補助金や光熱費などトータルで収支のバランスを取ることができればOK
  • 将来売却するかもしれないから、資産価値の高い家を建てたい

皆さんの家づくりに対する価値観と向き合いながら、ぜひZEH住宅を検討してみてくださいね。